
出産後、こんなお悩みはありませんか?
- ✓ くしゃみや咳をすると尿が少しもれる
- ✓ 赤ちゃんを抱き上げた瞬間に尿もれする
- ✓ トイレまで我慢しにくくなった
- ✓ 歩くと恥骨のあたりが痛い
- ✓ 寝返りや起き上がりで骨盤の前側が痛む
- ✓ 階段や片足立ちがつらい
- ✓ 出産から時間が経っても骨盤が安定しない感じがする
- ✓ 産後、下腹部に力が入りにくくなった
「出産したから仕方ない」と我慢している方も少なくありません。
しかし、産後の尿もれや骨盤まわりの不安定感には、骨盤底筋の機能低下や腹部・骨盤・股関節の筋肉の連携低下が関係している場合があります。
実際、NHS(英国国民保健サービス)でも、産後の尿もれに対して骨盤底筋トレーニングが紹介されています。
今回は、産後の身体に負担をかけにくい自宅でできる骨盤底筋トレーニングについて詳しく解説します。
そもそも「骨盤底筋」とは?
骨盤底筋とは、その名前の通り、骨盤の一番下側にある筋肉の集まりです。

骨盤の底でハンモックのように広がり、
- 膀胱
- 子宮
- 直腸
などの骨盤内臓器を下から支えています。
さらに、
排尿・排便をコントロールする
腹圧を調整する
骨盤を安定させる
体幹を支える
といった役割にも関係しています。
つまり骨盤底筋は、単に「尿を止めるための筋肉」ではありません。
横隔膜や腹部の深い筋肉などと協調しながら働く、身体の土台を支えるインナーユニットの一部なのです。
なぜ産後に尿もれが起こるの?
妊娠中は、お腹が大きくなるにつれて骨盤底部への負担も増えていきます。
さらに出産を経験すると、骨盤底筋やその周囲組織に負担がかかります。
その結果、
「締めたい時に骨盤底筋がうまく働かない」
という状態になることがあります。
特に、
- 咳
- くしゃみ
- 笑う
- ジャンプ
- 赤ちゃんを抱き上げる
- 重い荷物を持つ
といった瞬間には、お腹の中の圧力である「腹圧」が急激に上がります。
この時、骨盤底筋がタイミングよく働かなければ、尿道を十分に支えられず、尿もれにつながることがあります。
いわゆる腹圧性尿失禁でみられる典型的なパターンです。骨盤底筋運動は、腹圧性尿失禁などに対する保存的な対応の一つとして推奨されています。
では、産後の「恥骨の痛み」はなぜ起こる?
尿もれと一緒に多いのが、
「骨盤の前側が痛い」
「恥骨の真ん中が痛い」
という悩みです。
骨盤は左右の骨が前方の「恥骨結合」、後方の「仙腸関節」などを介してリング状につながっています。
妊娠・出産前後にはこの骨盤周囲に大きな負担がかかります。
そのため、
- 歩く
- 階段を上る
- 片足で立つ
- ズボンを履く
- 寝返りをする
- 車から乗り降りする
- 脚を大きく開く
といった動作で痛みが出る場合があります。
こうした骨盤前後の痛みは、**骨盤帯痛(Pelvic Girdle Pain:PGP)**として扱われることもあります。RCOGでも、恥骨周辺の痛み、歩行・階段・片足立ち・寝返りなどで症状が増えることが特徴として挙げられています。
注意!恥骨が痛い人は「締めればいい」とは限りません
ここはとても重要です。
産後だからといって、
「骨盤底筋が弱い=とにかく強く締める」
という考え方はおすすめできません。
骨盤底筋は、
締めることと、ゆるめること
の両方が必要な筋肉だからです。
力を入れ続けてしまう方や、痛みによって骨盤周囲の筋肉が過剰に緊張している方もいます。
特に恥骨の痛みが強い場合、
× 痛みを我慢してスクワット
× 強く脚を開くストレッチ
× 激しい腹筋運動
× 長時間の片足立ち
× 痛みを我慢して骨盤底筋を締め続ける
といったことは避けましょう。
骨盤帯痛では、脚を大きく開く動作、片足立ち、重いものを持つことなどが症状を悪化させる場合があります。
自宅でできる骨盤底筋トレーニング
それでは実際に行ってみましょう。
最初は仰向け、または横向きがおすすめです。
STEP1 骨盤底筋の場所を確認する
まず力を入れる場所を確認します。
イメージとしては、
「おならを我慢する」
「尿を止める」
ような感覚です。
肛門・膣・尿道周囲を、身体の内側へ
「キュッ」と締めて、少し上へ引き上げる
イメージで行います。
ただし、実際の排尿中に何度も尿を止めるトレーニングを行うのではなく、あくまで筋肉をイメージするための目安にしましょう。
STEP2 ゆっくり締める
①鼻からゆっくり息を吸う
②口から息を吐きながら骨盤底筋を締める
③まずは3~5秒キープ
④ゆっくり完全に力を抜く
これを、
5~10回
行います。
慣れてきたら10秒程度まで伸ばしていきましょう。
NHSでも、長く締める運動と短く締める運動を組み合わせ、最終的に各10回程度を1日3回行うことが紹介されています。
STEP3 「キュッ」と素早く締める
次は、
キュッ → ゆるめる
を素早く繰り返します。
5~10回程度から始めてください。
これは、
- くしゃみ
- 咳
- 笑った時
- 赤ちゃんを抱き上げる時
など、腹圧が突然上がった瞬間に骨盤底筋が反応する練習になります。
トレーニング中の3つの注意点
①息を止めない
「頑張って締めよう」とすると、息まで止めてしまう方がいます。
しかし息を止めると腹圧が強くなり、骨盤底部への負担が増えることがあります。
自然に呼吸しながら行うことが大切です。
NHSでも、骨盤底筋運動中は通常通り呼吸することが勧められています。
②お尻・太ももに力を入れすぎない
骨盤底筋を締めているつもりでも、
「お尻をギューッと締めているだけ」
というケースがあります。
最初は弱い収縮でも問題ありません。
骨盤の奥が少し持ち上がるような感覚を意識しましょう。
③締めた後は必ずゆるめる
骨盤底筋は、
収縮 → 弛緩
ができて初めて正常に機能します。
特に恥骨痛や会陰部の違和感がある方は、強く締め続けるのではなく、息を吸った時に骨盤底部がゆるむ感覚も意識しましょう。
日常生活でも骨盤底筋を守ろう
トレーニングだけでなく、普段の生活も大切です。
赤ちゃんを抱き上げる時
抱き上げる直前に、
「フッ」と息を吐きながら骨盤底筋を軽く締める
ようにします。
息を止めて勢いで持ち上げるのは避けましょう。
寝返りをする時
恥骨が痛い場合は、
両膝をそろえた状態で身体全体を一緒に動かす
のがポイントです。
着替える時
立ったまま片足でズボンを履くのではなく、
椅子に座って着替える
ようにしましょう。
赤ちゃんを片側だけで抱え続けない
いつも同じ側で抱っこすると、骨盤や股関節周囲に左右差が生まれやすくなります。
できるだけ左右を入れ替えましょう。
骨盤帯痛では、片脚に体重をかけ続けることや、身体をひねった状態、赤ちゃんを片側の腰で抱き続ける動作などを避けることが勧められています。
どれくらい続ければいい?
骨盤底筋は、数回トレーニングしただけですぐに大きく変わる筋肉ではありません。
尿もれに対する骨盤底筋トレーニングは、数か月単位で継続することが重要です。NHSでも効果を実感するまで数か月かかる場合があるとされ、NICEでは腹圧性・混合性尿失禁に対して、少なくとも3か月の骨盤底筋トレーニングが第一選択として示されています。
まずは、
朝・昼・夜に少しずつ
生活の中へ取り入れてみましょう。
育児中はトレーニング時間を作るだけでも大変です。
「毎日完璧にやらなければ」と考えるより、
授乳後・歯磨き後・寝る前
など、いつもの生活とセットにすると続けやすくなります。
こんな症状がある場合は一度専門家へ
次のような場合は、自宅で運動だけを続けず相談しましょう。
- △ 尿もれが長期間続いている
- △ 尿もれの量が多い
- △ 尿意を我慢できない
- △ 排尿時に痛みがある
- △ 骨盤内に強い圧迫感・下がる感じがある
- △ 恥骨の痛みが強く歩きにくい
- △ 寝返りや階段で強い痛みが出る
- △ 出産後も恥骨痛がなかなか軽減しない
- △ トレーニングすると痛みが増える
産後6~8週頃の健診は、こうした身体の問題について相談する機会の一つです。症状が強い場合は時期を待たず、産婦人科や泌尿器科などの医療機関へ相談してください。
骨盤底筋だけではなく「骨盤全体」を見ることが大切
産後の尿もれや恥骨痛を考える時、
骨盤底筋だけを鍛えればいいわけではありません。
骨盤底筋は、
- 横隔膜
- 腹部のインナーマッスル
- 股関節周囲筋
- お尻の筋肉
- 骨盤・腰椎
などと連動しています。
そのため、
「なぜ骨盤底筋が働きにくくなっているのか」
まで確認することが重要です。
西荻窪きりん堂接骨院では、産後の身体について骨盤だけを見るのではなく、
姿勢・骨盤・股関節の動き・筋肉の緊張・インナーマッスルの働き
などを確認し、一人ひとりの身体の状態に合わせて施術や運動をご提案します。
骨盤周囲の状態に応じて、ドイツマニュアルセラピー、関節モビライゼーション、筋膜へのアプローチなどを組み合わせ、痛みの少ない方法で身体を整えていきます。
まとめ
産後の尿もれや恥骨の痛みは、
「出産後だから仕方ない」
と我慢する必要はありません。
尿もれには骨盤底筋の筋力だけでなく、
呼吸・腹圧・骨盤・股関節・体幹との連動
が関係します。
まずは、
✓ 息を止めずに骨盤底筋を締める
✓ ゆっくり締める+素早く締める
✓ 締めた後はしっかりゆるめる
✓ 痛みを我慢しない
✓ 少しずつ継続する
この5つから始めてみてください。
そして、恥骨の痛みが強い方は「とにかく骨盤底筋を鍛える」のではなく、骨盤全体の状態を確認することが大切です。
「産後から尿もれが気になる」
「恥骨が痛くて抱っこや歩行がつらい」
「骨盤底筋に力が入っているのか分からない」
そんな方は、お身体の状態を一度確認してみましょう。
産後の身体に合わせた無理のないケアを続けていくことが、育児を少しでも楽にするための第一歩です。



